調理師と歯科技工士の関係性

JADE.,LLC 中込 敏夫

私が以前から思っていたこと。
それは調理師とは限りなく酷で美しく、それでいて稀な職業であるというものである。

彼らの扱う材料とは、生命体そのものである。稀に塩などの鉱物という生命体からかけ離れたものもあるが、おそらく99%以上のものが完全なる生命体であり、直前まで生きていた、もしく は生きているそのものに刃を入れて切り、刻み、潰して作業を行うのである。
この行為そのものに対して彼らはいったいどのように感じ、心の折り合いをつけているのであろうか。

さらに凄いと思うのは、一旦作業を進め始めるとその死体が刻々と変化し、最終的には命を全く感じさせない(もしくは超越した)一品へと変貌を遂げさせるのである。活け作りのような一見生々しいものであっても、そこに僅かな命のかけらを残しつつも、美味しそうとの感情を湧き 立たせる仕上げに呈する。

材料を活かすことに関して、これほどの職業が他にあろうか。よって書 き出しの部分、限りなく酷、美、稀という三文字が浮かび上がるのである。

我々歯科技工士の仕事は、実は真逆のことをしている。
我々の使用する材料は、100%と断言していいほどに生命とは程遠く無縁である。もちろん有機材料の原料は石油などの化石燃料であるため、太古は生物だったものが、微生物や熱や力により長い年月を経て変化したものである事実はある。
しかし原材料として製品化されたものの中に、命を感じることは全くない。

そしてその命が全くない材料を成形し、生命体であるヒトの歯の形を作り出していくのである。
まさか真に命を吹き込むことなどできようも無いが、歯の形態の中に機能というものを磨き込ん で封じ込め、たまさか命を与えるがごとく振る舞うのみである。
この所作を三文字で表現すると 如何なる文字になるのであろうか。

この両者の関係性。もし食事をしている人が私の製作した総義歯を装着している場合、生命体 を生命体あらずに呈したものを、生命体あらずのものを生命体に呈したもので咀嚼し、生命体維持にしていることになる。
これを面白いなと思う。

さらに考えは飛躍する。この生命体を直に扱うか否かで、師業と士業の違いがあるのではない か。ならば本来歯科衛生士は、歯科衛生師の方が正しいのではないか、云々。

なんて事を考えている私は、やっぱり変わってるんだろうな、とも思っている次第である。

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