食べるということ

私には、12月で95歳になる祖母がいます。

私が生まれた時から、新型コロナウイルスが流行する3年前まで一緒に暮らしていました。

祖母は85歳を過ぎた頃から少しずつ認知症になり、しばらくして自分で歯磨きが上手くできなくなりました。毎晩祖母の口腔ケアをする時が私にとって大切なコミュニケーションの時間でした。「おばあちゃん、歯磨きするよ!洗面所に行こう」と手を繋いでいき、歯ブラシや歯間ブラシも嫌がる事なく、終わった後は「あー、さっぱりした!」と笑顔を向けてくれて、私まで嬉しい気持ちでいっぱいな日々でした。

認知症が進行し、コロナの流行もあり祖母は施設に入所する事になりました。私は訪問診療という形で月に一度口腔ケアに通いました。家族は直接面会が出来ない中、私は元気な祖母の姿を動画に撮り、家族に見せていました。最初の一年は表情も明るく、私にお話もしてくれていました。

おそらく孫だとは分かっていないし、全く会話も成立していないけれど、楽しい時間でした。

突然、祖母が胃の調子を悪くして10日間入院する事になりました。施設とも違う環境に一人でいたというのもあり、帰ってきた祖母は少し元気がなくなっていました。

胃腸の負担にならないように軟食に移行し、大好きだったお寿司も食べられなくなりました。

それから口腔内の状態も変わっていきました。もともと、溢れるように出ていた唾液が少なくなり、舌苔が厚く、被せ物の下に食べカスが残るようになりました。下の歯は全て被せ物だったため施設の方が歯磨きするのも難しかったのだと思います。

しっかり噛めるのはずなのに、一度胃腸を悪くしてしまったのと高齢のため軟食が続きました。

しばらくして、だいぶ前に治療した右側のブリッジが外れてしまいました。

治療したくてもコロナの為外出が禁止されていて、数ヶ月後やっと義歯を入れる事が出来ました。義歯を入れたもの祖母の食は少しずつ細くなっていき、軟食よりもさらに柔らかい食事に移行していきました。

とろみをつけたお茶や刻んでやわやからくなったおかずとおかゆ。施設の方によるとあまり口を開けてくれなくなり、食べ物を口に溜めてしまい飲み込まなくなったとの事でした。私が口腔ケアに行った際もなかなか口を開けてくれず、うがいもできなくなっていました。そうして祖母は食べ物をうけつけなくなりました。

現在の祖母は、1日1本の点滴と綿に浸ませたお茶を口から少し入れる程度で生きています。食事を取らなくなって2週間が経ちました。ベッドの上でこんこんと眠り続けています。

昨日、口腔ケアを行なった直後、以前の祖母のようににっこりと嬉しそうな顔で私に笑いかけてくれました。「あー、気持ち良かった。」と言ってくれているようでした。

身近で祖母を見てきて自分の好きなものを口から食べることが、どんなに嬉しく幸せな事であり、噛んで飲み込むことが命を繋いでいるのだと気付かされました。

定期メインテナンスをすることでお口の中がスッキリするだけでなく、ある程度虫歯・歯周病の予防ができます。早めに治療を受けることでお口の中のトラブルが広がらないですみます。それ以上に毎日の正しい歯磨きが、自分の大切な歯を長持ちさせるのに1番重要です。

私はこれからも口腔ケアを通して、患者様の命と健康を守るお手伝いをしていきます。

みなさんがいつまでも美味しく食事をいただけるように願っています。

医療法人輝衛会 うちだ歯科 内田沙里

関連記事

  1. 自分の歯科人生を振り返って

  2. 桑田正博先生を追悼して

  3. コバルトコーヌス・パーティー2022

  4.  

  5. 「師の教え」

PAGE TOP