2019年に開催された「CKP2019 講演会」で、CKP発起人の
1人である、石濱洋美先生の講演がありました。
医科領域におけるコバルトクロム合金の臨床事例の紹介や、歯科におけ
るコバルトクロム合金の今後の可能性について話をされました。その話
の中で、コバルトクロム合金は時計の『ぜんまい』部分の開発から生ま
れた金属であることを初めて知りました。
コバルトクロム合金がどのような経緯で開発されてきたのか興味を持
ち、調べてみました。
コバルトの発見
・コバルトは1700年代に発見された鉱物であり、様々な合金の素
材として発達・普及されてきた。
・当初は、硬度、耐摩耗性から、ニッケル、モリブデンなどに添加され
て、工具などにもちいられていた。
・耐腐食性が注目され、1940年代頃より、整形外科領域で使用す
るネジ等の部品として医科材料としての開発が始まった
コバルトクロム合金の開発
・14世紀末のヨーロッパで使われていたのが、鋼で作られた、ぜ
んまい式の時計でした。ぜんまい部分は、とても切れやすかったという
ことです。
・アメリカの高級ブランドに数えられていた、エルジン(Elgin
National Watch Company)という、懐中時計や腕時計を製造していた時
計会社が、第二次世界大戦後に「エルジンの時計が戦場で錆びて壊れて
しまった。」という報告を受け、過酷な環境下にも耐えられる、ぜんま
いの素材開発に着手し、1950年頃にコバルト40%、クロム2
0%、ニッケル15%、鉄16%、モリブデン7%を含んだ、強靭性、
耐食性に優れた合金を完成させた。
・この合金はスーパーアロイと称されるようになり、船舶や航空機のス
プリングやワイヤー、ネジ、ガスタービン、ジェットエンジン等にも使
用されるようになった。
・現在、医療領域においては、ペースメーカーの電極リードの素材、人
工関節、整形外科で用いられる固定器具、血管内の手術器具や血管内ス
テント等、多くの医療用途に採用されている。
コバルトクロム合金は、このように開発され発展してきたことがわかり
ました。今後も新たな可能性を秘めた楽しみな合金だと思っています。
合同会社JADE 澤畠孝重
