突然のインタビュー

越地 弥生

先日、中学生の患者さんから、学校の課題として職業インタビューなるものの依頼がきた。
歯科医師という職業全般について、そして今後の目標ややりがいなどを聞かれたのである。

臨床に没頭しがちな今、こういった質問をされると、自分の考えを整理するきっかけになると思い、こうしたことは苦手なのだが、引き受けた。

インタビューが始まってみると、その中学生の彼女が歯科の仕事に非常に深い関心を持ってくれていることがよくわかった。
患者として矯正歯科治療を受けている間に、歯科医師という職業がもつ何事かが、彼女の心に強い印象を焼きつけていたのではないか、と感じた。
また、ひょっとしたら本人は歯科医師になりたいと思っているのではないか、とも思わせてくれた。

短い時間のインタビューだったが、思いがけず充実した楽しい時間になった。
終わる頃には、あらためて自分たちの仕事に誇りを感じ、今後も精進しようと前向きな気持ちになり、こうしたことは苦手なはずだったが、「もう少し続いてくれたらな」などと思う自分がいた。

このインタビューの中で、どきっとする瞬間があった。

それは、将来の展望について聞かれたことであった。
こちらはすでに大人なのである。
大人の将来の展望、というと、それこそ、老後の心配事が主に考えつく自分に苦笑しながら、
矯正歯科医としての自分の将来の展望とは何か、必死に考えることとなった。

正直なところ、中学生にうまく伝えられたかどうか、自信はない。
本当に答えに窮したが、とりあえず、こう伝えたのだ。
今後も一人の矯正歯科医として、診ていく患者数に限りはあっても、自分としては一人一人に誠実に
向かい合っていきたいと思っている。これまでの、また、これからの出会いを大事にしながら、と。

この中学生のインタビュー以来、私は臨床医としてこれからどう生きていくのか、ことあるごとに考える日々が続いている。

診ていく患者数に限りはあっても、自分としては一人一人に誠実に向かい合っていきたい、という
中学生のインタビューで答えた想いに変わりはない。

ただ、それに加えて、出来得るならば、診療を続けながらも、より多くの人々に歯の健康の大切さ、人生における健康な歯の意味、歯科診療の大切さを理解をしてもらい、適切な受診行動をするように人々の行動変容を促す機会を得られれば、と考えるようになってきている。

矯正歯科治療では、成人ばかりではなく、子どもの患者も多い。
そして、咬合、呼吸、姿勢どれをとっても、子どもたちの今後の人生にさまざまな影響をおよぼすことになる大事なものばかりだ。
人生の早い段階で、こうしたことに子どもたち自身が気がついてくれれば、ひとつには、彼らが自分の両親や祖父母へのインフルエンサーになってくれるのではないか、と考えついたのだ。
そのためにも、診療の際に、子どもたちとどのようにコミュニケーションをすればいいか、それが目下の私の関心事である。

今後も、少しでも彼らの未来がいいものになるよう、矯正歯科医として寄り添いながら、
さらに、より多くの人々に歯の健康について深く理解してもらうために何が自分にできるのか、
考えていきたいと思っている。

越地弥生

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